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もえしょく勝手に雑談会
表情・・・表現力が凄い!
設定も半端ないです!!
小枝子ちゃんが人間になるまで??
ストーリー性も見事です!
エントリーテーマ 桐灰はる 擬人化 次の作品をみる 前の作品をみる
終了 2014.05.18 → 2014.06.18 エントリー番号 : NO.909481

■小枝子ちゃんが人間になるまでのお話

 

 

 あるとても寒い冬の夜の出来事。数年に一度という大吹雪によって自分の巣穴を見失ってしまったウサギがおりました。

 仲間と共に巣穴に持ち込む為のどんぐりや木の実をとりに出かけた途中で仲間とはぐれ、道に迷ってしまい、自分で集めた木の実と共に取り残されてしまいました。

 

 吹きすさぶ風に音はかき消され、積もった雪によって鼻も効かなくもなくなり、右に左に舞う雪で視界は遮られ、一匹孤独に寒さに耐えておりました。

 自慢の耳も鼻も使えない状態で絶望しながら覚悟を決めたそのウサギはゆっくりと目を閉じ、心の中で仲間たちとの楽しい思い出を振り返りながらお別れを言いました。

 体の力が抜けて、朦朧とした意識の中でウサギは寒さを感じる事も出来ずにいました。強烈な眠気と共に近づいてくるその予感に漠然と怖さと安らぎを感じながら受け入れた時、体にぬくもりを感じ始めます。

 

 とうとうその時が来たかと思った瞬間、抱きかかえられる感触に驚き、思わず見えない瞳を開くとウサギはびっくりしてしまいました。

 なんとウサギは人間に抱きかかえられており、感じたぬくもりはその人間の体温と、背中にはられたカイロの暖かさだったのです。

 

 雪と風が止み、月が薄ぼんやりと照らすに連れて浮かび上がってくるその人間のシルエットを忘れまいと必死に意識を保とうとしましたが、奪われた体温に体力を削られていたためウサギは気を失ってしまい、目が覚めた時は近くのお寺まで運ばれておりました。

 背中に付いた、まだほんのり暖かいカイロを見てウサギは集めた木の実をおそなえしてお願いをします。

「神様、どうか私を人間にしてください。助けて下さった人間にお礼がしたいのです。」

 

 しばらくの静寂の後、まばゆい光とともに声が聞こえてきました。

「優しさによって助かったその身を、人に優しさを振りまくために使いなさい。」

 その言葉と共にウサギに奇跡が起きました。なんとウサギは人間の姿になる事が出来たのです。ウサギは何度も何度もお礼を言いました。少しおいて、天からの声は続けます。

 「お前がその姿で居れるのは14時間だけです。その後は人間の姿を保てないから注意するのです。お前が世界中の人を幸せにした時、完全な人間になれるでしょう。」

 ウサギは嬉しさに顔を綻ばせ、自分の体を興味津々に眺めながら、昨晩の命の恩人の姿をまぶたの裏に描きます。

 身にまとった法衣と袈裟に、ウサギにとっては大きく優しい手のひら。大きな眼鏡の奥にあるのはきっと優しい眼差し。そして月に照らされ美しく反射する、綺麗に剃られた頭...。

 

 世界中を旅する決心を決めた表情のウサギに、天からの声は続けます。

「人間になった貴方には人間の名前が必要ですね。そうですね...これから貴方は小枝子(さえこ)と名乗りなさい。この名前が貴方を導くでしょう。」

 その言葉を最後に消えてゆく光に、小枝子は何度も何度もお礼を言いました。

 そして一部始終を見ていたお寺の住職さんに法衣を借りると、世界中の人に安らぎとぬくもりを、そして命の恩人に恩を返す為に小枝子は旅に出かけるのでした。

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